BLOG
ブログ
- TOP
- BLOG
2020/02/26 17:17
温熱療法は、免疫系に対して本当に様々な効果があることが、in vitro(生体外で研究)および一部はin vitro(生体での研究)で示されてきています。温熱療法は能動的および受動的の両方において、腫瘍抗原の放出をもたらします。
通常、クリニックなどで一般的に行われる41〜43℃の温度の温熱療法で、エキソソーム中のHSPおよび腫瘍特異的ながん抗原が、細胞から放出されます。この範囲の温度あるいはそれ以上の温度で、HSPの直接放出と腫瘍抗原の流出は起こります。細胞外環境に遊離したHSPの増加は、次の反応として、免疫活性の増加と抗原提示反応を刺激し、がん免疫サイクルの開始を促進します。
熱ストレスは、いったん、抗原提示細胞(APC)による、抗原の取り込みが起こると、APCのリンパ節への移動の移動を促進します。これには、MHC-I、MHC-II、および幾つかの共刺激分子(CD80、CD86、CD40など)の発現上昇が一部、介していると考えられ、それに続くT細胞の活性化が起こります。さらに、温熱療法はT細胞による免疫監視を強化し、また、樹状細胞などのAPC上のtoll-like receptor 4(TLR4)の発現を上昇し、サイトカイン、ケモカイン、一酸化窒素(NO)の放出を引き起こし、これらは獲得(適応)免疫応答を誘導します。獲得(適応)免疫応答には、T細胞とAPCを含む、生来の相手となるプレーヤーの一部が含まれ、同様に熱に敏感です。さらに、熱は、c-FLIP(マスター抗アポトーシス制御因子)の枯渇を促進し、T細胞の末梢組織への輸送を促進する細胞間接着分子1(ICAM-1)の発現を誘導することによって、リンパ球が維持するのを調節し、腫瘍へのT細胞の移動を促進します。
温熱療法は、また、血液灌流を増加させ、腫瘍組織中の間質圧を減少させることによって、治療薬としての共刺激因子または免疫エフェクター細胞の腫瘍組織への浸潤を促進できる可能性があります。ナチュラルキラー(NK )細胞の腫瘍に対する移動活性および細胞溶解活性もまた、温熱療法によるHSPの腫瘍細胞からの遊離、およびNK細胞表面上のNKG2Dおよび腫瘍細胞表面上のNKG2DリガンドであるMICA(MHCクラスIポリペプチド関連配列A)の発現をともに上昇するによって促進されます。最後に、腫瘍細胞のアポトーシスは、エフェクターT細胞において、熱ストレスにより誘導されるFasリガンド(FasL)およびサイトカインの発現上昇を介して、一部は引き起こされます。温熱療法によって、腫瘍特異的反応を含む免疫系を刺激することができるので、温熱療法を免疫療法と併用することで、免疫療法単独で得られる臨床効果をより強化できるかもしれません。
(引用文献)
Hurwitz MD: Hyperthermia and immunotherapy: clinical opportunities. Int J Hyperthermia. 2019 Nov; 36(sup1):4-9
Toraya-Brown S and Fiering S: Local tumour hyperthermia as immunotherapy for metastatic cancer. Int J Hyperthermia. 2014 Dec;30(8):531-9